なぜ、お地蔵さまを棺に入れるの?


お地蔵さまを棺に入れる…

聞き慣れないかと思いますが、それにはこんな理由があります

 どうして、棺に人形(ひとがた)を入れるの?

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人は古くから、人形や埴輪など人の形をしたものを、亡くなった方と一緒に葬るという習慣を持っていました。これは日本に限らず世界中で見られる風習で、祭祀観や死生観を反映する大切な儀式のひとつです。日本では、友引人形や市松人形を、亡くなった方のお供としてお棺に入れる風習がつい最近まで続けられていました。

その意味合いは、「正月に女性が亡くなると、近しい人を引いていかないように」だったり、また、「小さな子供が亡くなると、さみしがらないように」だったり。近代では六曜の友引に送らねばならない時に、「友を引いていかないように」という意味合いもありました。

もちろん、生前に本人や家族が大切にしていた人形そのものや、ご家族ご親族の写真、かわいがっていたペットのぬいぐるみなど、おくる人たちができるだけ「亡くなった方が寂しくないように」と想い考えてお棺に入れていらっしゃいます。


張り裂けそうな故人への想いを
あなたは何に託しますか?


単なる風習のひとつだと片付けてしまうにはあまりにも永く続くこの儀式。その裏を返せば、おくる人たちの気持ちが整理がつかずに残っている事や、亡くなった人との決別をするための「心の区切り」の現れであることも分かります。

「今は一緒に逝けないけれど、待ってて欲しい」

「ひとりで寂しいだろうけれど、身代わりに何かを入れてあげたい」

「伝えきれない思いを託した気持ちを持っていって欲しい」

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「おくる人」の張り裂けそうに切ない、亡くなった方への思慕の気持ちがあることに気がつきます。

そんな亡くなった方の供養になるもので、また、おくる人たちの気持ちが癒され、慰められるものとして、古くから親しまれていた「お地蔵さま」がありました。

 どうして「お地蔵さま」なの?


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もともとお地蔵さまは、「地蔵菩薩」が正式な名前で、仏教の信仰対象である菩薩の一尊です。大地が全ての命を育む力を蔵するように、苦悩の人々をその無限の大慈悲の心で包み込み、救う所から名付けられたとされているそうです。

他界への旅立ちの場である葬儀場や墓場、また住宅街の辻(四つ角)や、坂道の麓などにも建てられており、古くからお地蔵さまのやさしいお表情と親しみやすいお姿は、人々のくらしの中で日常的な信仰を受けていました。

関西地方ではお地蔵様の縁日である7月24日(旧暦)を中心に「地蔵盆」というお祭りが行われ、辻や路傍のお地蔵さまの前にお供え物が飾られます。子や孫の安全と成長を願い、そしてご先祖様の冥福を祈ってお地蔵さまに手を合わせる子供と祖父母や親子のほほえましい姿は、全国各地で見ることができます。あなたも一度はお地蔵さまに手を合わせたことがあるのではないでしょうか。

古来より庶民に愛されてきた
お地蔵さまが、故人をお守りします


日本には、様々なお地蔵さまが祀られています。子供の守護を願う「子安地蔵」や「子育て地蔵」。病気や辛苦の身代わりをしてくれる「洗い地蔵」「赤地蔵」「首なし地蔵」「腰折地蔵」。厄除けとして「とげぬき地蔵」や「釘抜き地蔵」「苦抜き地蔵」などの他にも災難を予知してくれた「汗かき地蔵」や「火焼け地蔵」、延命を願う「延命地蔵」「首つぎ地蔵」など、弱い立場の人を最優先で救済し、万遍なく慈愛を施される地蔵菩薩は、様々な宗教や信教の垣根を越えて庶民に絶大な人気を古来から持っています。

お地蔵さまほど、お寺ではなく、身近な道端、あぜ道、町辻が似合う仏さまはいないのではないでしょうか。

そんなお地蔵さまが故人に寄り添い、一緒に煙となってあの世へ旅立ってくれる…。だから、迷わないよう錫杖を突き道を案内し、寂しくないよういつも隣りに寄り添い、故人の極楽での幸せと、現世の全ての人々の幸福を願い、祈り続けてくださると安心できるのです。 

 最近の葬祭事情も様変わりしてきました


最近の傾向として、「私らしい」最期を望まれる方が増えてきました。 景気の影響もありますが、従来の型通りのお葬式ではなく、密葬や、家族葬、おくる会・偲ぶ会、音楽葬など、また、お墓の形も合祀墓、協同墓、散骨、手元供養など、様々な形が増えて来ています。

これは亡くなる方が長寿になったことで、弔問にいらっしゃる方が減り、親戚付き合いも限られた人だけになり、建前や見栄を張らなくても良くなったこともあるようです。また、生前から「自分らしい」最期を考える事がタブーとされなくなった事で、選択肢が増え、とても自由になっているのです。

どう生きるか、どう死ぬかを考え、自分なりの死生観を見つめ直せる時代は、豊かな証でもあるのでしょう。

 故人を悼み、冥福を祈るために木地地蔵は作られています


最近は、火葬場の窯も性能が上がりはしたものの、環境への配慮などから、お棺に入れるものにたくさんの制限が設けられています。

愛用していた小物でも、眼鏡、ライター、万年筆などは断られることも多いようです。

また、おくられる皆さんのお考えにもよりますが、生きていらっしゃる人の写真は入れない方がよいというご意見もあります。

せっかくの最期の時を、温かく慈愛に満ちた気持ちで迎えたい。お棺に入れるものでもめたりするのだけは避けたいのは言うまでもありません。
「おくる人」も「おくられる人」への溢れる想いと気持ちを込めて、故人を悼み、冥福を祈るために木地地蔵は作られました。

慈【みちびき地蔵】は、錫杖(しゃくじょう)を突いて、
極楽まで迷わないよう御案内します。


愛【お供地蔵】は、私がいつも側にいます、
畏れることはありません、と
施無畏印(せむいいん)を結びます。

この二地蔵は柩の中で故人に寄り添い、
故人と共に煙りになって、あの世へ旅立ちます。

願【おくり地蔵】は、遺された人と共に現世で合掌し、
おくられた人、おくった人々の幸せをいつも祈ります。

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江戸時代から東北地方で作られてきた伝統こけしの「こけし工人」が描いた慈悲深いお顔は、おくる人の悲しみを癒し、尽きぬ思いを安らかに慰めてくれることでしょう。

木地地蔵がお手元に届くまで▼

錫杖(しゃくじょう)とは、遊行僧が携帯する音の出る杖で、この音には僧が山野遊行の際、禽獣や毒蛇の害から身を守る効果があり、教義的には煩悩を除去し智慧を得る効果があるとされます。
※施無畏印(せむいいん)とは、手を上げて手のひらを前に向けた印相で、漢字の示す意味通り「恐れなくてよい」と相手を励ますサインであるといわれています。